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胆汁が、筋肉に?

 肝臓で合成された胆汁酸は、胆汁の主要な構成成分として胆嚢に蓄えらて、食事を摂ると腸管に分泌されます。分泌された胆汁酸は、脂溶性の栄養素の吸収を助ける働きを担います。しかし、約95%の胆汁酸は、小腸下部において再吸収され、門脈血を介して肝臓に輸送されます。これを「腸肝循環」と呼んでいますが、胆汁酸の再利用の過程で、胆汁酸の一部は肝臓への取り込みを免れます。取り込みを免れた胆汁酸は、全身を巡るため、食後は腸管および血中の胆汁酸濃度が急激に上昇することが知確認されています。胆汁酸は、全身に広く発現する胆汁酸受容体(TGR5)によって感知され、様々な代謝プロセスをコントロールしています。特に、骨格筋におけるTGR5の活性化が、筋肥大や筋力の増大を誘導することが確認されていますが、TGR5が骨格筋代謝に及ぼす影響には、まだ不明な点が多く残されていました。
 骨格筋においてTGR5が、代謝に及ぼす影響を明らかにするため、骨格筋のTGR5を過剰発現するトランスジェニック・マウス(遺伝子を人工的に操作したマウス)を呼吸分析したところ、呼吸交換比の増大が確認されました。この結果は、このマウスがエネルギー源として糖を優先的に利用していることが分かりました。また、代謝反応の結果からは、このマウスの骨格筋における代謝の流れの活性化を強く示唆するデータが得られました。したがって、このマウスにおける呼吸交換比の増大は、骨格筋の解糖系が活性化したことが原因のひとつと考えられます。骨格筋は運動器であると同時に最大の糖代謝器官でもあるため、TGR5を介した骨格筋の肥大化および糖利用率の増大は、肥満や老化に伴う耐糖能の悪化を抑制することが可能と考えられます。つまり、適切な食事と運動が、肥満を予防し、老化を遅延させる効果があるということです。
by 筋知良
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