心不全は、人口の高齢化に伴い急速に増えています。心不全は、心臓病の「終末像」などと言われていて、がんよりも生存率が低く、予後も悪いと言われています。大阪公立大学大学院医学研究科循環器内科では、大腿部の筋肉内脂肪の割合と予後との関係が大きいことを確認しています。心不全は、心臓が悪いために体力が低下し、息切れやむくみが起こり、徐々に悪化して寿命を縮めてしまいます。現時点では、根本的な治療法はなく、特に高齢者では入退院を繰り返すことが多い疾患です。心不全の４年生存率は約５６％で、がん全体の５年生存率の約６３％よりも低くなっています。
　予後に影響する要因について、心臓の機能との関係より、罹患した人が運動にどれだけ耐えられるかという能力を意味する「運動耐容能」が予後を決めると考えられています。運動耐容能は、心臓や肺の機能だけでなく、筋肉の量や能力（パフォーマンス）に規定される部分も多く、筋肉量が少ない心不全患者は予後不良であることが研究で明らかになっています。しかし、筋能力は、筋肉の質が影響しますが、筋肉の質の指標である筋肉内脂肪比と心不全患者の予後との関係は、明確になっていませんでした。筋肉内脂肪についてはこれまでに、糖尿病などの生活習慣病との関連も報告されています。
　筋肉内脂肪と心不全の関係を顕かにするために調べたところ、心筋症により心不全に至った患者９３人をＸ線コンピューター断層撮影（ＣＴ）画像から算出した大腿部の筋肉内脂肪比が高いグループと低いグループに分け、心臓病による死亡または、再入院の発生率を調べた結果、筋肉内脂肪比が高いグループでは、心臓病による死亡または再入院の発生率が高いことが確認されて、筋肉内脂肪比が予後を決める因子になっていることが分かりました。つまり、運動で筋肉の量や働きを活性化させることが、予後の改善につながると思われます。
　心不全は、安静にして、運動などは言語道断と言われていました。しかし、医療先進国を始めとする世界基準は、「心不全には運動すること」が常識になっています。安静にしている方は、軽い運動からでも初めてみてください。
by　珍香鈴

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