SARSが発生した時、WHO(世界保健機関)は「SARSという病気と、SARSに対する恐れの二つに対して闘わねばならなかった」と言っています。当時WHOは「Knowledge dispels fear(知識は恐怖を凌駕する) 」と訴え、人々の恐怖を取り除こうと懸命でした。
英語の「risk」は危険度を示す概念ですが、日本人は概して「安全」か「危険」かという二つの選択肢で考える傾向にあり、そのためパ ニックに陥りやすいということがあるようです。 微生物の専門家は「感染症には致死率の高いものから低いものまで、常に人間とともにあり、そこから逃れることは絶対にできませんが、『相手を知る』ことで漠然とした恐怖ではなく、冷静に判断することができる」と言っています。
例えば、ノロウィルスなら、次亜塩素酸ナトリウムによって消毒ができますし、エボラ出血熱なら防護服を着れば怖くありません。インフルエンザは飛沫感染しますが、服についても1時間もすればウィルスは死んでしまうということも分かっている現代、むやみに怖がることはありません。SARSは2002年11月に始まり2003年7月5日で終息宣言をしています。
歴史的には大量の死者が出ていた感染症が多くありますが、医学が進歩した現在においては、たとえ新しい感染症が生まれたとしても、ワクチンや治療薬が開発されるはずですが、「撲滅できるもの」、「長くつきあっていくもの」という区別はあります。天然痘は、防御免疫のできるワクチンですから、ワクチンを接種した人は感染せずそこで伝播が止まりますが、インフルエンザワクチンは、感染を完全に防御することはできません。
現在の人智で、感染症で全人口の何分の一かが亡くなるといったことが起こるようなことは決してなく、ある程度の時間で対処法が解明されます。また、ヒト自身も大量のウィルスや細菌等の微生物と、ずっと一緒に生きてきて、人間の行動の変化によって、共に変化してきています。結局は、新型コロナウィルスなどの感染症にどのように向き合って、そのつきあい方を間違えないようにすれば怖がる必要はありません。
by 珍香鈴
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