地球上のほぼすべての生物には、睡眠やホルモン分泌、体温調整など、さまざまな生理機能に約24時間周期のリズムが存在し、体内時計によって制御されています。体内時計は、基本的に時計遺伝子が制御しています。時計遺伝子のメカニズムは、時計遺伝子のもつ情報から、細胞内で起こる複数のプロセスを経て、「時計タンパク質」と呼ばれるいくつかのタンパク質が合成されます。出来上がったタンパク質が細胞の中に溜まってくると、今度はそのタンパク質自身が、合成を抑制するようになります。一方で、合成されたタンパク質は時間が経つにつれて分解され、だんだんと少なくなってきます。すると合成を抑制する働きも弱くなり、ふたたびタンパク質が作られるようになります。このように時計タンパク質自身がフィードバックをかける巧妙な仕組みによって、時計タンパク質の約24時間周期の増減、すなわち体内時計が作用するようになっています。
体内時計を考慮して食事の時間を制限する実験を、回転かごで運動できる状況においたマウスと、回転かごを取り外してケージの中でうろうろする程度しかできないようにしたマウスに対して行い、両者を比較しました。意外にも、運動しているマウスのほうが急激に体重が増加するという結果が得られました。結論から言うと、運動しているか、していないかという影響をはるかに超えて、食べるタイミングが肥満につながってくるということです。そのうえで、運動しているほうが、運動でエネルギー消費した分よりたくさんのエサを食べるようになるため、結果として急激に体重が増加することになったのです。食生活の乱れによって引き起こされる肥満に対して、運動があまり有効でないというのは、とても意外な結果です。食べるタイミングは、私たちが考えていた以上に重要と言えます。
by 珍香鈴
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