「鬼滅の刃」の中で、主人公の並外れた嗅覚は、鬼の居場所を突き止めるだけでなく、人や鬼の気持ちを理解することも可能にしています。確かに「匂い」は、色々な生体への情報を届けてくれます。今は、食品に消費期限などの表示があるので、少なくなりましたが、匂いで食べれるか否かを判断していました。
匂い物質は、鼻の鼻腔の奥に並んだ嗅細胞の受容体でキャッチされ、脳へと信号が送られます。この仕組みを解明した米国の研究者が、2004年のノーベル生理学・医学賞が贈られて以降、匂いに対する研究が加速しています。人間の嗅覚受容体は約400種類で、嗅覚が鋭いイヌは約1200種類ですが、化学物質に反応する人工の匂い受容体を1200個持った匂いセンサーを開発すれば、イヌ並みの識別を客観的に行える可能性があります。すでに開発に取り組んでいる企業もあり、1ミリ角のセンサーに1200個の匂い受容体を載せる技術を開発し、スマートフォンに組み込む計画をしています。
英国などでは新型コロナ感染者を探知犬が嗅いで見分ける試みを行っていたり、体長1ミリほどの線虫が、がん患者の尿に含まれる物質を嗅ぎ分け、がんの早期発見につなげる検査法も行われています。喜怒哀楽に伴う体臭変化で、感情を識別することも夢ではなく、センサーを組み込んだスマホで、自分や周りの人の健康状態や気分を確かめる時代が来るかもしれませんが、何となく味気ない気がします。匂いで安全か、否かを判別していた感覚が、失われていき、人の生理的能力が低くなっていくことを考えると不安になります。人の身体の仕組みを考えると便利になることを諸手を上げて喜べないように思います。
by スカラー
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