事故などで腕を失った人が、残された肩あるいは肘の筋肉が出す電気信号(筋電信号)を使い、腕と指の代わりになる義手を動かす学習をした際の脳活動を測定した研究があります。実験によると、この筋電義手を装着した当初は、なかなか思うように義手が動いてくれない状態での脳の血流量をfMRIで計測すると、運動野だけでなく脳全体で血流量が増大していました。しかし、数週間にわたり動かし方を学習し、思い通りに義手を動かせるようになったとき、脳の血流量は運動野を中心とした非常に狭い範囲でのみになっていました。
別の実験によると、英語が不得意な学生は、英語を話そうとしているとき、言語に関わる左半球の広い範囲で血流が増大していましたが、英語をしっかり学習し熟達した学生は、文法処理に関わるとされている前頭葉の狭い部分だけになっていました。脳の血流の増大は、ニューロン集団の発火の増大を意味しているので、血流が増える範囲が狭くなるということは、学習によりある機能が向上するにつれ、より少ないニューロンの集団でその機能を実現するようになることを意味しています。
これは、学習によりニューロン集団はより同期して発火するようになり、この同期発火がより高精度で、つまりより正確なタイミングで生じるようになれば、より少数のニューロンが発火するだけで信号をより確実に伝えるようになるのです。このようなメカニズムが、脳の機能が向上するにつれ血流増大の範囲が狭くなるという現象に関わっています。つまり脳も運動と同様で、上手くできるようになるとエネルギー消費が少なくて済むようになるようです。ですから、fMRIで測定できる脳の血流量については、その増大があるからと言って、専門家と言われる人たちの見解が必ずしも正しいとは限らないということです。
by グランブラー
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