言葉の発達では、「他者の言葉を聴く機能」「言葉の意味を理解する機能」、そして「言葉を表出する機能」がすべて発達する必要があります。聴く機能(聴覚系)に異常があると、他者の発する音声が脳に届かないため、言葉が遅れます。近年では新生児聴覚スクリーニングの進歩により、聴覚の異常の早期発見が可能になりました。
聴覚の異常がないのに言葉の遅れがある場合、「言葉を理解する機能」と「言葉を表出する機能」の両面を調べることになります。これは、発達検査や知能検査と言語検査を組み合わせて行います。発達検査や知能検査では遅れがみられず、言語検査でのみ、「言葉を理解する機能」、または、「言葉を表出する機能」の発達に異常がみられる場合を「言語障害(言語症)」と言います。
言葉の出る時期が通常より遅れ、言葉の数が増えるペースや、複雑な文章を理解したり、話したりし始める時期もしばしば遅れます。その結果、同年齢の子どもたちに比べ、短くて単純な言語表現にとどまり、文法的な間違いも多くなります。「適切な言葉を思いつけない」「言葉の定義をきちんと理解していない」「同義語を知らない」「同じ言葉の他の意味を知らない」などの特徴もみられます。ところが、日常生活の中では、前後の状況や会話の流れなどから直感的にうまく話を合わせてしまうという代償行動を身につけることがあるため、言語障害の存在が見落とされている子どもは意外に多いと考えられます。
発達検査や知能検査で発達全体の遅れがみられる場合、「知的能力障害(知的未発達症)」が疑われます。知的能力障害では、言葉の発達だけでなく、身の回りのこと、運動、作業、判断など、日常生活を送る上で必要なさまざまな力を身につけていくことが難しく、そのため年齢が上がるにつれて学業や社会生活に支障をきたすので、言語障害とは、異なります。
言語障害の場合、本人が理解できるペースで学習すれば、着実に向上しますので、親や教師が焦って無理な指導を行わないことです。焦った指導は、本来なら学べるはずのことを学び損ねるだけでなく、自信や意欲を失い、二次的に抑うつなどの精神症状を合併することになります。本人の理解力に応じた指導や教育を行う態勢が重要と言えます。
by 筋知良
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