食べ物を噛む(咀嚼)時の下顎骨の運動は、咀嚼筋と呼ばれる筋肉が主に働きます。下あごを上あごに対して上・下したり、水平に移動したりすることによって、歯が食べ物を噛み切ったり、すりつぶしたりすることが出来るのです。歯を食いしばった時に顎の外側で硬くなる筋肉を「咬筋」と呼び、硬い食べ物を噛み砕くときに働きます。こめかみ(側頭部)には、下顎を引き上げ(閉口)や顎を後方に引く時に働く扇形の「側頭筋」があります。また、下顎の内側には、内側翼突筋があり咬筋や側頭筋と協同して働きます。顎を前に突き出すのは咀嚼筋の中で最も小さい外側翼突筋と呼ばれる筋で、開口の時に働く筋です。口を開ける時に咀嚼筋の力を抜くと下顎の重さにより開口します。大きく口を開いて食べ物をとらえる時には、舌骨上筋が主に働き、この時に外側翼突筋は口を開けやすいように顎を前方移動させます。また、食べ物を口唇でとらえたり、咀嚼している時に食塊を口の奥のほうに押し込むのに表情筋の一部がはたらきます。
表情筋は顔面の表情に関係する筋であり、皮膚の直下ある薄い筋で感情を顔面にあらわすことができます。頭皮、眼、鼻、耳、口の周り、頬にあり、上唇、下唇、さらに頬の運動に関係します。特に口輪筋と頬筋は唇と頬を閉じことから、食べ物が口からこぼれないようにし、食物が挟まっている時には奥の方に押し出すような働きもします。
咀嚼筋には、ミトコンドリアと呼ばれるエネルギーを産生する工場が筋線維の間に他の骨格筋と比べ、ぎっしりと詰まっています。そのため持続性の運動を可能にするのです。しかし、食べ物を噛まなくなる(咀嚼回数が減る)と筋肉も衰えてきます。また、筋線維が細くなったり脂肪変性が起こったりして筋力の低下を引き起こすようになり顎等も加わり、「噛む」という動作はさらに衰えます。このため、「噛む」という刺激が脳に伝わり難くなり、脳の働きにも影響してくるので、しっかり咀嚼するようにしてくださいね。
by ボヤッキー
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