人間で特に発達した脳部位、「前頭前野」はちょうどおでこのあたりにある脳領域で、脳の高次機能の最高中枢であり、思考、判断、注意・集中力、理性、作業記憶などに関連しています。そして、今回は、前頭前野の中でも「本能的な感情を抑えて、理性で我慢する」とか「相手のことを思いやって言わない」といった機能に関わっている、「前頭眼窩(がんか)野」について紹介します。前頭前野は、特に人間で発達した脳の領域ですので、倫理的な制限があり、他の脳領域に比べて研究が遅れていました。
1848年にアメリカで鉄道建設作業に従事していた男性が、火薬の爆発により鉄棒に頭を貫かれるという事故に遭い、前頭眼窩野に損傷を受けました。仕事熱心で責任感も強く、部下にも尊敬されるような人物でしたが、事故後は、人格が激変。衝動を抑えられず、無礼で罰当たりな行為に走ったり、我慢ができず自己中心的に振舞うようになってしまったのです。
また、アメリカの神経科学者のアントニオ・ダマシオが著書の中で紹介した、別の患者のケースも同様でした。その患者は、有能なビジネスマンでしたが、脳腫瘍を切除するための外科手術を受け、前頭前野の一部を切除されました。その結果、知能は保たれましたが、人格が大きく変わってしまいました。切除されたのが前頭葉のどこかなのか、明確にされていないのですが、術後に大きな感情の低下が認められたことから、感情を司る大脳辺縁系の扁桃体とのつながりが強い前頭眼窩野がダメージを受けていたものと思われます。また、損傷後に「優柔不断になった」とも報告され、もともと活発な男性だったのに、術後から積極性がなくなり、あらゆることに対して決断ができず、行動を起こせなくなってしまったそうです。
その他にもいくつかの症例が報告されていますが、続きは後編で紹介します。
by chirune
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