筋肉から分泌されるマイオカインの存在は、かなり古くから提唱されてきていましたが、本格的な研究がされるようになってきたのはこの15年ほどで、比較的に新しいモノです。
これまで数十個のマイオカインが報告されていますが、マイオカインの研究が開始された初期のころから注目されている分子としてサイトカインの1つであるinterleukin-6(IL-6)は、運動後に血液中に上昇することが以前から知られていました。当初は「激しい運動により、骨格筋が炎症をおこすことで免疫細胞から分泌され、血液中に上昇する」と考えられていました。しかし、「筋が損傷しないような運動でも血液中のIL-6の上昇が観察されること」、「運動直後に上昇したIL-6はその後、すみやかに元のレベルに戻ること」、「運動させた筋でIL-6の遺伝子発現が増加していること」などの複数の証拠によって運動による血液中のIL-6レベルの上昇は骨格筋細胞からの分泌によることが確認されていました。しかし、これらはいずれもヒトや動物個体を用いた検証であり、骨格筋細胞からIL-6が分泌されていることを明確に示すには至っていませんでした。
培養細胞を用いて検証すれば簡単に証明できると考えられますが、骨格筋細胞は、培養皿上では、生体の骨格筋のように分化せず未熟なままであるため、電気刺激などの脱分極刺激を与えても収縮させることができず、骨格筋細胞を用いてIL-6の分泌を直接的に証明することができませんでした。しかし、培養技術の改善や細胞を収縮させる装置が開発されたことにより、いくつかの研究で、分化させた骨格筋細胞を電気的に収縮させることが可能となりました。この装置を用いて分化させた骨格筋細胞に電気刺激を与え一定時間収縮させ、その細胞培養上清を解析すると、収縮させた骨格筋細胞の培養上清ではIL-6 レベルが上昇していたことから、骨格筋細胞から分泌されていることが証明されました。
研究グループは、骨格筋細胞収縮、これまでに複数のマイオカインを発見しています。IL-6同様に身体に大きく作用することが確認されており、脂肪燃焼促進、糖代謝、がん抑制、免疫制御などに効果を発揮することが報告されています。この筋肉からの分泌物質は、まだまだしられていない身体への作用が期待できるものと考えられます。
by ドクトル・ノブ
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