マイオカインは、筋肉から分泌される身体に良い作用の生理活性物質としてご存知の方も多くなっており、認知度も上がっています。しかし、その中でも特異的に作用するマイオカインとして注目されているのがミオスタチンです。ミオスタチンは、筋の成長を阻害するTGF-beta(細胞増殖・分化を制御し、細胞死を促すサイトカイン)の1つとして発見されました。発見当初は、マイオカインという言葉が一般的ではなく、骨格筋に発現して分泌されることや実験でミオスタチンを欠損させたマウスが、筋量の著しい増加することから、骨格筋量の調節に重要な役割を担う分子として注目されていました。
ミオスタチンは、主に骨格筋から分泌されて、筋の成長を負に制御します。ミオスタチン発現レベルの低下は筋肉量の増加と体脂肪減少、ミオスタチン発現レベル上昇は、筋肉量の減少と活動レベル低下をもたらします。これまでにミオスタチン遺伝子に欠損/異常のあるウシ、マウス等が知られており、野生型に比べ筋肉量が2~3倍に増加することが観察されています。ヒトにおいても高齢者やHIV感染者における筋肉量の減少(サルコペニア)に関わっていること、ミオスタチンに異常のある新生児では筋肉が異常に発達することが報告されています。また、血中ミオスタチン濃度は、有酸素運動によって低下すること、運動不足によるインシュリン抵抗性獲得にも関わっていることが示唆されています。
特に高齢者では、ミオスタチンレベルが上昇しているとの報告もあることから、ミオスタチン阻害が筋萎縮の阻止に有 効である可能性があり、ミオスタチンレセプターであるIIB(アクチビンレセプター)やフォリスタチンなどをターゲットとした筋萎縮薬の創薬研究に注目が集まっています。ミオスタチンの阻害が様々な筋萎縮モデルの筋量を増加させることが動物実験レベルでは報告されており、筋萎縮の治療薬としては大変興味深いものです。しかし、病的に筋委縮が発生している場合の治療として用いられるなら悪くないと思いますが、健康な人が筋肉増強や体脂肪減少のために用いることはかなり身体に無理がかかると思われます。
by 頃僕来
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