高齢者は、わずかな低血糖状態でも認知機能が低下し、重大な交通事故を起こす恐れがあることを指摘した論文が、日本糖尿病学会の英字誌に掲載されています。糖尿病研究歴60年の医師が高齢者を被験者としてデータ採取した実験から分かったもので、「運転前に甘いモノを少し食べると防止できる」と呼び掛けています。
一般的に空腹時血糖は、50㎎/dl以下が重度低血糖、50~70㎎/dlが低血糖気味、70~110㎎/dlが正常とされています。この医師は、血糖値の時間的変化と認知機能の関係を簡単な算数計算問題150問の解答速度、自動車運転適性検査の2方法で測定したところ、正常血糖値内で、解答にかかった時間は平均5分34秒でしたが、4時間後の低血糖気味の状態では、解答に平均6分53秒を要しました。そして、甘いモノを食べた1時間後には血糖値が150を上回ると、平均4分45秒で解答できたと報告しています。
また、運転適性は、信号に対する反応速度やハンドル操作技術などを総合して5段階で評価し、70歳以上の平均値と比べたところ、血糖値が正常値の状態では、上から2番目の「やや優れている」でしたが、低血糖気味に低下した5時間後には下から2番目の「運転に注意を要する」になりましたが、甘いモノを食べた30分後には血糖値が140までに上がると、評価は最も上の「優れている」にアップしたと報告しています。多くの高齢者(特に75歳以上)は同様の傾向があり、重度低血糖ではなく、正常血糖値の70近辺でも認知機能は低下している可能性が大きいようです。
東京・池袋で高齢者が運転する車に母子がひかれ死亡した事故は、原因をアクセルとブレーキの踏み間違えと断定しています。わずかな低血糖でも瞬時に間違いに気付くことは難しく『おかしい、何とかしなければ』とアクセルを踏み続けた結果、100キロ近い速度が出て大惨事になったようです。血糖値が高いからと炭水化物や糖質を制限していることで、このような惨事が起こる可能性もあるので、血糖値を下げ過ぎないようにして、日常生活の正常な機能を確保するようにしたいものです。
by 太久籠
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