イチジクは「不老長寿の果物」と評されるほど、栄養価が高いことでも知られています。古代ローマでは、重要な甘味源となっていたそうです。甘さの元となる糖分を含んでいますが、腸の活動を活発にする水溶性の食物繊維「ペクチン」を含んでいるため、整腸作用によって 便秘の解消に役立ちます。カルシウムや鉄などのミネラル分をバランスよく含み、骨粗鬆症や貧血の予防にも役立つと言われています。また、タンパク質分解酵素の「フィシン」を含むので、肉や魚と一緒に生のイチジクを食べれば、タンパク質の消化を助けてくれるでしょう。
また、イチジクに関しては面白い話があります。旧約聖書の一節にある、最初の人間であるアダムとイブが神の命に背いて「禁断の果実」を口にしてしまったために、楽園を追放されてしまう話はとても有名ですが、実は旧約聖書の創世記には「果実」とあるだけで、リンゴとは書かれていないのです。もともとリンゴは、古来ギリシア神話等で魅惑の象徴とされていました。それに加えて、西暦382年にローマ教皇ダマスス1世が旧約聖書をヘブライ語からラテン語に翻訳するように命じたとき、当時の学者は、「果実」の意味をもつヘブライ語を、ラテン語の「malum」に置き換えました。Malumには、「悪」という意味と「真ん中に種と芯があり周りに果肉がある果物」という意味もあり「リンゴ」と解釈されることもあります。まさに「悪い果物」というイメージにピッタリの言葉だったわけです。その影響で、1667年出版の『失楽園』に「リンゴ」と記され「禁断の果実=リンゴ」が世界中に広まったようです。
しかし、元の旧約聖書には、禁断の果実を食べたアダムとイブが、イチジクの葉を腰にまきつけたという話が記されています。また、イタリアの芸術家ミケランジェロが描いた、システィーナ礼拝堂の天井画「最後の審判」には、イチジクが禁断の果実として描かれています。これらのことから、キリスト教徒の間では「禁断の果実=イチジク」が定説のようです。禁断の果実として描かれていても、イチジクの栄養素やおいしさは魅力的です。その魅力を感じながら、旬の果物を楽しんでください。
by chirune
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